研究概要 |
アレルギー疾患,慢性炎症性疾患に対する治療ターゲット分子として,自然免疫を惹起するための病原体構成成分特異的認識受容体であるToll like receptor(TLR)とIL-18を含むIL-1受容体ファミリーに共通の細胞内シグナル伝達アダプター分子MyD88の蛋白立体構造及び機能解析を行った。安定同位体元素ラベルの15N-硫酸アンモニウム及び13C-グルコースを用い,標識されたMyD88リコンビナント蛋白を作成し,高濃度の単量体蛋白サンプルを調整,核磁気共鳴法(NMR)を用いた手法で,精密な溶液タンパク立体構造を決定することに成功した。決定した構造情報は,Protein Data Bankに登録した。得られたMyD88TIRドメイン構造とすでに報告のある他のTIRドメイン結晶構造と比較を行なったところ,LPS不応性マウスの遺伝子変異部位やTLR2の変異体結晶構造と機能解析からTIRドメイン間のシグナル伝達に重要とされ保存性の高いBBループ部分の構造にも大きな差異を認めた。さらにTIRドメイン構造は全体としてかなり類似しているが,表面電荷ポテンシャルは,それぞれで大きく異なる。そこで構造情報から重要と思われる荷電極性アミノ酸残基についてアラニン置換変異体を約40種類作成し,培養細胞を利用したin vivoの機能解析により,IL-18とLPS/TLR4シグナルの両者間でMyD88内の必須残基の相違を見出した。この情報を元にIL-18シグナルを遮断することなく,TLR4刺激を遮断しうる新規タンパク分子として,特許を出願した。また,MyD88とアダプター分子TIRAPの直接相互作用について,in vitroの結合実験から新たなTIR-TIRヘテロ相互作用様式を決定した。本研究で得られたタンパク構造,機能,新規変異分子の設計情報から免疫異常疾患への応用へと今後展開する。
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