研究概要 |
(目的)インフルエンザ脳症は、乳幼児期の疾患であり、インフルエンザ発症後早期に生じることから、その発症には自然免疫系が深く関わっていることが推測されている。今年度は、インフルエンザ脳症を発症した児(4名)と、インフルエンザに罹患したが脳症を発症しなかった児(10名、うち熱性けいれん発症4名)で、主に末梢血中のToll-like receptor(TLR)の発現量について比較検討した。 (方法)1.ヒトTLR1〜10それぞれについてPrimerとProbeを設計しReal-time PCRの系を作成した。2.両親から文書で同意を得られた患児のインフルエンザ脳症発症時(またはインフルエンザ発症時)と退院時の末梢血をPaxgene Blood RNA Kitを用いてRNAを抽出しcDNAを作成した。beta-actinを内在コントロールとしABI PRISM 7500を使用して各TLRの発現を比較した。 (結果)インフルエンザ感染に伴うサイトカイン産生にはTLR7の発現が必要であることが報告されている。今回の検討では、末梢血中TLR7の発現量は、インフルエンザ脳症<インフルエンザ罹患のみ<インフルエンザに伴う熱性けいれんという傾向が認められた。また、TLR3,4,9についてもインフルエンザに伴う熱性けいれんの児で最も高いという傾向が認められた。 (今後の研究の展開)上記と並行して、現在、脳症発症時と退院時のサイトカイン(GM-CSF,IFNγ,IL-1β,IL-2,IL-4,IL-6,IL-8,IL-10,IL-12,IL-13,MCP-1,RANTES,TNFα)をQIAGEN LiquiChip Workstationを用いて解析している。今後、更に症例数を追加して検討を行っていく。また現在、同様の解析をインフルエンザ以外の脳症(HHV-6、EBV)でも開始している。
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