研究概要 |
胎生9.5日から10.5日の1型・2型IP_3Rダブルノックアウトマウス(DKO)を用いて、1)whole-mount in situ hybridization(WISH)法による心臓部位特異的マーカーの発現の観察、2)免疫組織化学法による心内膜細胞マーカーの発現とアルシアンブルー染色による心ゼリーの観察を行い、以下の結果を得た。 1.1型・2型IP_3RDKOと同腹の正常対照において、胎仔心臓全体のマーカーであるNkx2.5,MLC2a, MLC2v,右心室のマーカーであるdHAND,左心室のマーカーであるeHAND,房室管のマーカーであるTbx2の発現を比較した。Digラベルしたプローブを用いたWISH法を行い、すべてのマーカーで発現様式に差は認められなかった。 2.房室接合部心内膜細胞のマーカーであるNFATc1の発現を免疫組織化学法によって観察した。また、酸性ムコ多糖類を青染するアルシアンブルー染色で心ゼリーの形成を確認した。同腹の正常対照と比較して1型・2型IP_3RDKOにおいても、心内膜細胞にはNFATclの発現が認められ、アルシアンブルー染色の染色強度も同程度であった。しかし、心内膜細胞におけるNFATclの発現は経時的に低下し、心内膜細胞から形質転換し心ゼリー内に侵入する間葉系細胞の数は1型・2型IP_3RDKOにおいて有意に低かった。 以上の結果および昨年度の結果より、1型・2型IP_3RDKOの胎仔心臓は、初期ルーピングまでは正常に発生し、心房、房室管、心室の領域化はほぼ完成しているが、心内膜床の形成不全をきたしていること、心内膜床の間葉系細胞の減少から心内膜上皮一間葉転換に異常があることが示唆された。
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