研究概要 |
緒言:低形成肺は治療が困難で、死亡率の高い新生児の疾患である。ニトロフェンを妊娠マウスに投与することによって胎児肺が低形成となることはよく知られており、低形成肺のモデル動物として頻用されている。実験的低形成肺の成因として様々な成長因子の関与が考えられている。 今回、ニトロフェンを、妊娠9日目のマウスに投与し、妊娠18日または妊娠13日に胎児肺を摘出しFGFの低形成肺における役割につき、以下の検討を行った。正常コントロールとして、オリーブオイルを妊娠9日目にマウスに投与した胎児肺を使用した。 1)低形成肺における、FGFRの発現 方法:妊娠18日目に胎児肺を摘出し、肺蛋白を抽出した。蛋白定量を行った後、等量のタンパク量を電気泳動し、Western Blotting、酵素抗体反応を用いてFGFR-1,2,3の発現を検討した。低形成肺4検体、コントロール4検体で比較した。有意差検定は、Student-t検定を用いた。 結果:FGFR-1,-3の発現は低形成肺において有意に低下していた。FGFR-2の発現については有意差が認められなかった。 2)低形成肺におけるFGF-9の作用 方法:妊娠13日目の胎児肺を顕微鏡下に摘出、24well plateにDMEM/F12培地1mlを滴下しTrack Etch Membraneを浮遊させ、その上に肺を静置し培養を行った。FGF-9を0ng/ml、20ng/ml、50ng/mlの濃度で培地に添加し、実体顕微鏡を用いて、24,48,72時間毎に器官の成長を観察した。 結果:FGF-9による気管分岐数の増加、肺胞領域の変化は認められなかった。コントロール群においても変化は認めなかった。 考案 低形成肺におけるFGFR-1,-3の発現は低下していた。免疫染色では低形成肺でFGFR-2の発現が明らかに低下しており、サンプルを増やすことにより、有意差が得られる可能性が高い。FGF-9による胎児肺の成長効果は今回の検討では認められなかった。コントロール群でも変化が認められなかった事から、今後、FGF-9の濃度を増量し、さらに検討する必要があると考えられた。
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