研究概要 |
角化細胞特異的PTEN欠損マウス(K5Cre-PTEN^<flox/flox>)は表皮の過角化と肥厚、毛嚢の過形成、毛周期の亢進に加えて、高頻度に有棘細胞癌を発現している。今回我々は角化細胞特異的PTEN欠損マウスから得られた培養角化細胞を用いてDNAマイクロアレイ解析を行い、このマウスの形質発現に関わる遺伝子を網羅的に解析した。 今回用いたDNAマイクロアレイには20000以上の遺伝子が搭載されているが、このうちPTEN欠損角化細胞で野生型角化細胞と比較して1.5倍以上、あるいは0.7倍以下の発現強度の変化がみられた149遺伝子の機能を文献的に調べ、角化細胞の分化・形成、炎症、細胞増殖/細胞周期、アポトーシス、代謝、発癌に関わる遺伝子について検討した。 その結果、特に表皮増殖に関わる遺伝子(s100a8、s100a9、Saa3、Idb1)、角化関連遺伝子(keratin 23,keratin 7、cystatinE/M, s100a4),特にcornified cell envelope関連遺伝子(sprr2i、 Sprr2f、 Sprr11、Sprr2d、 cst6、Scel、 Flg)の変化はPTEN欠損マウスの表現形の形成に影響を及ぼしていると推測された。アポトーシス関連遺伝子(DnaselL2,sgk, Caspse14,death-associated kinase2)の変化から、角化細胞におけるPTEN欠損が、角化過程におけるアポトーシスを抑制することによって表現形に何らかの影響を及ぼしている可能性が示唆された。またTPA誘発による皮膚発癌で増加が報告されている遺伝子(s100a8、s100a9、Gsta4、Saa3)も発現が増加しており、PTENの欠損が発癌過程に及ぼす影響を考察する上で興味深い所見と言えよう。
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