研究課題
若手研究(B)
カポジ肉腫ウイルスサイクリン遺伝子をリンパ管内皮細胞特異的に発現したマウス(k-cyclinマウス)ではリンパ灌流が障害されており、リンパ浮腫や胸水の貯留を来す。このマウスを用い、接触皮膚炎におけるリンパ灌流の役割を検討した。0.5%あるいは0.1%DNFB (2,4-dinitrofluorobenzene)を剃毛した腹部に1回塗布して感作を行い、5日後に0.25%DNFBを耳に塗布して惹起したところ、24時間後の耳の厚さはk-cyclinマウスでは野生型マウスと比べて有為に厚かった。この傾向は接触抗原に0.5%FITCを用いても同様であった。組織学的には真皮の浮腫と共に多数の細胞浸潤を来しており、単なるうっ滞に伴う肥厚ではないと考えた。次に皮膚の樹状細胞の遊走に関して検討した。k-cyclinマウスと野生型マウスの表皮ランゲルハンス細胞の数を比較したところ、有意な差は認めなかった(1402±417個/mm^2と1535±87個/mm^2)。そこで0.5%FITC塗布24〜72時間後の所属リンパ節を確認すると、k-cyclinマウスではFITC(+)I-A(+)細胞あるいはFITC(+)CD11c(+)細胞はほとんど認められなかった。従ってリンパ灌流が障害されているk-cyclinマウスでは、皮膚の樹状細胞がほとんどリンパ節に遊走していないことが分かった。最後に0.5%DNFBで感作したマウスの鼠径リンパ節のリンパ球を別のマウスの尾静脈より注入し、24時間後に0.25%DNFBを耳に塗布して惹起を行った。レシピエントが野生型マウスの場合、ドナーに関わらず耳の肥厚は軽度であったが、レシピエントがk-cyclinマウスの場合、ドナーに関わらず耳は著明に腫脹した。従ってk-cyclinマウスで接触皮膚炎が増強していることには、主に惹起相が関与していることが考えられた。
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Clinical and Experimental Dermatology 32・1
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