研究概要 |
近年、細胞内に発現するパターン認識受容体としてのNLR分子群の機能と,この遺伝子異常によって特徴的な皮膚症状を病態の1つとする自己炎症性疾患が発症することが注目されている。家族性寒冷刺激蕁麻疹の原因遺伝子として報告されるCIAS1/cryopyrinもその1つであり、この遺伝子の異常によって蕁麻疹を病態の1つとする自己炎症性疾患(家族性寒冷蕁麻疹/Muckle-Wells症候群/CINCA症候群)を発症する。 1)本研究課題の実施にあたり、国内の症例を収集するとともに、症例から同定されたCIAS1遺伝子の変異体を作成し、その活性化を介合蛋白であるASC(apoptosis-associated speck-like protein)の共存の有無とともに,NF-・Bの活性化で評価した。本研究を通じて確立した遺伝子変異の活性測定系は、臨床症状の重症度とよく相関することから、予後判定などに有用な情報を提供できる。 2)CIAS1の変異によつて、遺伝子を導入した単球系細胞において、ネクローシスとしての側面をより強くもった細胞死が誘導されることを見いだし、この細胞死がライソゾーム酵素であるカセプシンB依存性の新たな機序によることを見出し報告した。 3)肥満細胞への疾患変異体の導入のために,アデノウイルスベクターを作成し,GFPを指標とした導入効率の検討を行い,この系であれば肥満細胞へと効率よく遺伝子が導入できることを確認した。ただし,ヒト疾患関連変異体はマウスの細胞内では,IL-1βの産生やcaspase-1の活性化を指標とした場合,種族差のためか機能しないことが明らかとなった。このため今後は,CIAS1を活性化する因子として最近報告されたR837(imiquimod)を用いてCIAS1の活性化を誘導する系で,肥満細胞の機能解析を予定している。
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