研究概要 |
1.近赤外線スペクトロスコピー 広汎性発達障害を持つ成人を対象として、語流暢課題遂行中の前頭前野の酸素化ヘモグロビン変化量を近赤外線スペクトロスコピーにより計測した。その結果、広汎性発達障害における酸素化ヘモグロビン変化量の低下がみとめられ、広汎性発達障害者の前頭葉機能不全が示された(Kuwabara et al.,2006,Behav Brain Res)。さらに、同課題を用いて、広汎性発達障害を持つ小児と成人、広汎性発達障害の兄弟姉妹、および健常児と健常成人を対象に前頭前野の脳機能計測を行った。その結果、小児では広汎性発達障害群、健常同胞群、健常統制群の3群間の酸素化ヘモグロビン変化量に有意な差をみとめなかったが、成人では広汎性発達障害群の脳血流変化が健常統制群に比べ小さかった。また、健常同胞群も健常統制群に比べ血流変化が小さいことが明らかになった。これらの結果は、広汎性発達障害における前頭葉の成熟過程の異常を示すものであり、さらに成熟過程の異常は健常同胞においても見られる事から、その背景には遺伝的な要因が少なからず影響しており広汎性発達障害の素因を反映したものである可能性が示唆された。 2.神経心理学的検査 広汎性発達障害を持つ成人、その兄弟姉妹、健常者を対象に言語性記憶の体制化を調べるための単語記憶検査を実施した。その結果、広汎性発達障害群の記憶パタンは健常群とは異なり、広汎性発達障害における記憶体制化の障害が示された。しかしながら、それらの特徴が健常同胞群においては示されなかったことから、本研究で用いられた記憶課題の遂行に広汎性発達障害の素因は反映されないことが示唆された。
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