研究課題
若手研究(B)
我々は双極性障害モデル動物として脳内mtDNA変異蓄積マウスを用い、患者細胞で観察された細胞内Ca^<2+>シグナリング異常に着目して検討してきた。野生型に対する変異マウス由来単離ミトコンドリアではCa^<2+>取り込み速度亢進が観察された。Tgマウスにおける行動異常とミトコンドリアCa^<2+>取り込み異常に共通して奏効する薬剤を探索することは、有効な治療薬候補物質を追及するために必要である。しかし、脳由来ミトコンドリアは肝臓や筋肉に比べ、一個体から抽出できるミトコンドリア量には限界があり、現況の手法には、薬剤効果の検討には技術的困難があった。そこで浜松フォトニクス社製FDSSを用いた測定系を立ち上げた。この方法では従来の約8分の一のミトコンドリア量で測定でき、Ca^<2+>取り込み能の指標として96穴プレート内に分注されたミトコンドリア外液Ca^<2+>量変化を蛍光指示薬(Ca^<2+> Green-5N)で検出する。高感度カメラにより、0.5秒毎の時間分解能で多サンプル同時測定が可能になり、ミトコンドリア活性を維持するための温度管理も可能である。また、自動分注器装備システムにより、試薬の96サンプル一括投与が高精度に制御可能であり、再現性ある結果を得られる評価系が確立できた。野生型とTgマウス群で比較するためのCa^<2+>試薬とミトコンドリア量の適切な割合、測定容量、シグナル感度に応じたCa^<2+>指示薬濃度などを検討し、条件設定を行った。mitochondrial permeability transition pore(mPTP)開口を介したミトコンドリアCa^<2+>制御機構について、mPTP開口阻害薬であるシクロスポリンA、ボンクレキン酸の影響、逆に開口亢進作用の知られているカルボキシアトラクチロシド存在下の野生型マウス由来ミトコンドリアを用いて既報と同様の結果が確認され、測定系の有用性が示唆された。
すべて 2006
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Journal of Neuroscience 26(47)
ページ: 12314-12324