研究概要 |
昨年度に1.5T MRI装置(Signa EXCITE, GEメディカル)を用いて健常ボランティア頸椎の拡散テンソル画像を撮像し,画像の解析を行った。その際の問題点として,拡散テンソル画像の解像度の不足と画像歪みにより,解剖学的に細い脊髄神経を評価することが難しいということがあった。 頸椎(頸部)は解剖学的に画像の歪みを生じやすい箇所であり,画像解析用ワークステーション上での歪み補正などの工夫を加えてもこの問題をクリアすることは難しく,脊髄神経に対してapparent diffusion coefficient(ADC)およびfractional anisotropy(FA)といったテンソルパラメーターの一定した値を得ることはできなかった。 そこで,拡散強調像を用いた脊髄神経の視覚的評価について,feasibilityを検討することとした。健常ボランティアの頸椎に対して前後・左右・上下にMPGを印加した拡散強調像とそれら三軸の合成画像を求め,脊髄神経の描出を視覚的に評価したところ,前後にMPGを印加した画像において最も安定した描出が得られた。同じ撮像法を,腕神経叢損傷の患者5例に対して行ったところ,損傷を受けた脊髄神経の異常を検出することが可能であり,他検査(脳脊髄腔造影)の結果とあわせてもある程度の一致が得られた。臨床的な意義については今後の検討の余地があるが,脊髄神経を評価する新たな方法としての可能性が示された。
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