研究課題/領域番号 |
17790898
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
外科学一般
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
赤津 知孝 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (20338057)
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研究期間 (年度) |
2005 – 2006
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研究課題ステータス |
完了 (2006年度)
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配分額 *注記 |
3,300千円 (直接経費: 3,300千円)
2006年度: 1,600千円 (直接経費: 1,600千円)
2005年度: 1,700千円 (直接経費: 1,700千円)
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キーワード | 赤血球 / 酸素センシング / ATP / 血管拡張 / 低酸素応答 / 血管拡張機構 |
研究概要 |
血液体積の50%を占める赤血球が単なる酸素運搬体としてはたらくばかりでなく、微小循環局所の酸素分圧を感知して血流の調節を行っている可能性が注目されている。この現象のメカニズムに関して米国Duke大学のStamlerらはヘモグロビンのシステイン残基に結合した一酸化窒素(NO)が、酸素分圧の低下により細胞内のグルタチオンをvehicleとして細胞外に放出されるというモデルを提唱している。一方、われわれは赤血球内部の代謝物質を一斉解析した結果から、わずか1分間の低酸素暴露により解糖系が急速に加速するという現象を捉えた。その際、解等系の加速に対してATPの増加が量論的に少なかったことから、ATPが赤血球の外に放出されている可能性に着目した。ATPは血管内では、シグナル伝達物質として内皮の特定受容体(purinergic receptor)に作用し、内皮からのNOの産生を促し血管拡張を起こすことが知られている。そこで、我々は赤血球が周囲の低酸素を感知し、ATPを血管拡張のシグナルとして放出することで局所の血流を調節しているという仮説を立て実験を行った。分離したヒトの赤血球を用いて、1分間の低酸素に曝した際に赤血球から放出されたATPの量をchemiluminescence assay法によりin vitroで測定した結果、赤血球は低酸素時により多くのATPを放出していた(低酸素性のATP放出反応)。ヘモグロビンの構造を一酸化炭素(CO)の結合によりR-stateに固定した場合、低酸素性のATP放出反応は略完全に阻害された。一方、NOの結合によりヘモグロビンの構造をT-stateに固定した場合、低酸素刺激がないにもかかわらず赤血球はATPを放出した。以上から、赤血球がヘモグロビンをセンサーとして酸素濃度を感知し、ATPの放出をコントロールすることで血管のトーヌスを変化させ、組織の需要に見合った血流調節を行っている可能性が示唆された。本研究は、ヘモグロビンのアロステリー(構造・機能相関)に修飾を加えることで局所の血流を人為的に制御できる可能性を示唆するものであり、将来救命救急、外科侵襲学領域への幅広い応用が期待される。
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