研究概要 |
分子シャペロンgp96は,近年,抗原が抗原提示細胞に提示される際にきわめて重要な役割を担う分子であることが明らかになりつつある.今回われわれは,腫瘍由来のgp96の発現増強を放射線照射により誘導し,樹状細胞を用いた効率のよい免疫療法の開発を目指した「放射線併用樹状細胞腫瘍内局注」マウスモデルを作成しその効果を検討した. 【方法】マウス扁平上皮癌細胞SCCVIIに2Gy/day x 1の放射線を照射し,細胞中のgp96の発現をウェスタンブロットにて,また,照射後の細胞の形態,細胞内のgp96の局在を蛍光染色にて検討した.また,in vitroにおけるgp96の細胞療法に及ぼす影響をcytotoxic assayにて検討した.in vivoの系ではマウスの大腿にlocal tumorとして,胸部皮下にはdistant tumorとしてSCCVII1x10<SUP>5</SUP>を皮下移植し,大腿のみに4Gy/day x 3の放射線照射とそれに続く樹状細胞の腫瘍内局注を行いlocal tumorおよびdistant tumorの抗腫瘍効果を検討した.さらに、腫瘍内に樹状細胞を直接注入した際の全身抗腫瘍効果を評価するため、TDLN(tumor drainage lymphnode)内の細胞障害性T細胞分画を検討した。 【結果】gp96の発現は,照射後48時間で増強が見られた.また蛍光顕微鏡による観察では細胞の肥大化とともに細胞質内にgp96の強い発現増強が観察された.effector細胞をマウス脾臓細胞,抗原をSCCVIIのwhole tumor lysate,抗原提示細胞をDCとし,targetをSCCVIIとしたcytotoxic assayを行ったところgp96を加えた群では強い細胞傷害活性が観察された.また.in vivoの系において放射線照射およびDCの腫瘍内局注のマウスモデルでは、大腿のlocal tumorのみならず,遠隔の未治療distant tumorにも抗腫瘍効果が観察された.また、腫瘍内に樹状細胞を注射した際、TDLN内の細胞障害性T細胞分画の増加が観察され全身抗腫瘍効果が惹起されたことが確認された。 【まとめ】腫瘍への放射線照射は,腫瘍のアポトーシス,あるいはネクローシスの誘導とそれによる腫瘍抗原の放出という利点だけではなく,gp96の発現増強を介したsystemicな免疫応答の増強が期待できる.一方で,樹状細胞の腫瘍内局注はcell deliveryの点できわめて有利であり,これらを組み合わせた放射線併用樹状細胞腫瘍内局注法はさらなる効率的な免疫治療になる可能性がある
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