研究概要 |
昨年度までの当講座における研究にて、CDK阻害蛋白質p27のユビキチンリガーゼKNAF1(Kipl N-terminal Association Factor 1)を同定し、KNAF1とp27の結合、KNAF1によるp27のユビキチン化および量的制御、KNAF1による細胞周期促進機構を解明した。 さらにKNAF1結合蛋白の1つとしてKNAF1-BP1を同定し、昨年度は「KNAF1-BP1によるKNAF1を介したp27タンパクの分解制御機構」の解析を行ったが否定的な結果であった。 しかしいくつかの実験結果から「KNAF1-BP1によるcyclin D1の転写制御を介した細胞周期制御機構」というKNAF1非依存的な新たな機能を見出した。以下に示す実験結果を元に、現在論文投稿中である。 1)培養癌細胞T98G, HeLa, HCT116,U20SにてsiRNAによるKNAF1-BP1のノックダウンを行ったところ、タンパクおよびmRNAレベルでcyclin D1の発現が低下した。 2)T98G細胞においてKNAF1-BP1をノックダウンし、cycloheximideを用いたchase assayを行ったところ、KNAF-1BP1の発現抑制に伴うcyclin D1タンパク分解速度の変化は見られなかった。 3)同様にactinomycin Dを用いたchase assayでは、KNAF1-BP1の発現抑制によるcyclin D1 mRNAの安定性への影響はみられなかった。 4)T98G細胞においてKNAF1-BP1をノックダウンし、nuclear run-on assayを施行したところKNAF1-BP1の発現抑制に伴うcyclin D1遺伝子の転写活性の低下が見られた。 5)T98G細胞にてKNAF1-BP1をノックダウンし、細胞周期および細胞増殖の変化を観察したところ、KNAF1-BP1の発現抑制による細胞周期進行および細胞増殖の遅延が観察された。 6)ヒト大腸癌臨床検体を用いた解析では、KNAF1-BP1のmRNA発現と、cyclin D1 mRNAの発現との間に正の相関がみられた。
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