研究概要 |
骨折治癒過程におけるCOX2の役割を明らかにするために、10週齢(若週齢)および40週齢(高週齢)COX2ノックアウト(KO)マウスとワイルドタイプ(WT)マウスの両側大腿骨骨折モデルを計4群に分けて作製した。片側に低出力超音波パルス(Low intensity pulsed ultrasound ; LIPUS)を照射したものを照射群、反対側を非照射群とした。それぞれの群を骨折後時系列で犠牲死させ、LIPUSが骨折治癒過程に与える効果を軟X線撮影、μCT撮影、組織化学染色および組織免疫染色を用いて検討した。 高週齢COX2 KOマウスでは、骨折後10日の膜性骨化と軟骨形成は、高週齢町マウスと同等に認められた。骨折後21日では内軟骨性骨化を認める一方で、骨折部に隣接する仮骨中心部の線維性組織が広範囲にわたり残存していた。このモデルに対してLIPUSを骨折後1日から照射しても、骨折治癒過程に大きな変化は認められなかった。これらの結果から、LIPUSの骨折治癒促進効果を示す機序にはCOX2が必須であると考えられた。 そこで骨折部にプロスタグランジンE2受容体であるEP2,EP4アゴニストを局所投与したところ、骨折後21日目の内軟骨性骨化の遅延は、高週齢WTマウスと同等まで回復した。この条件下でLIPUSを照射したところ、骨折21日目には硬性仮骨架橋を認めるようになった。よって、LIPUS照射による骨折治癒、特に内軟骨性骨化促進作用機序にはCOX2が深く関与し、EP2,EP4以下のシグナルが必須であることが解明された。 さらに、組織学的検討においてLIPUS照射群でのみ、仮骨周囲を構成する線維性組織にはVEGFシグナル陽性所見を認め、同部位に一致して旺盛な血管新生を認めた。これらの結果から、VEGFシグナルカスケードと骨折治癒過程における内軟骨性骨化の間には、何らかの相関関係が存在することが示唆された。
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