研究概要 |
胎盤で選択的に遺伝子発現しているβhCG、hPLを標的とし、母体血漿中で胎盤のmRNAの発現量が評価できることを昨年度、確認した。母体血漿中βhCG、hPL遺伝子発現量が母体血漿中蛋白濃度と相関を示したことは、(1)母体血漿中のmRNAが比較的安定した状態で血漿中を循環していること、(2)母体血漿中の様々な他のmRNAを定量することで胎盤の生化学的変化を直接評価可能なことを示唆した。以上のことから、妊娠高血圧症候群などの胎盤が病態形成に主要な役割を果たしている疾患の無侵襲な病態評価法として、母体血漿中mRNAの定量が有用であると考えられた。 そこで、今年度は、妊娠高血圧症候群を発症した症例とそのコントロールの計89例を対象に、従来から妊娠高血圧症候群で蛋白レベルで高値を指摘されている遺伝子についてRT・PCR法で定量し、その発現量と臨床症状との関係を検討した。検討した遺伝子は、PAI-1, tPA, CRH, Selectin P, Placenta-specific 1, VEGF, VEGFR-1, endoglinである。結果は、正常に比較し、軽症妊娠高血圧症候群、重症型、HELLP症候群と臨床症状の重症化に伴い、全ての遺伝子発現が増強していた。また、蛋白尿の程度、拡張期・収縮期血圧の重症度と遺伝子発現を直接比較したが、ここでも重症化に伴った発現増強が観察され、この相関は蛋白尿で最も強かった。更に、遺伝子では、PAI-1が最も強く相関していた。このデータは3編の論文として投稿している。
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