研究概要 |
絨毛膜羊膜炎は早産を惹起するばかりでなく、子宮内での感染の暴露は胎児の脳に障害(脳性麻痺・脳室周囲白質軟化)を起こす。絨毛膜羊膜炎時における卵膜でadrenomedullin(AM)濃度が減少し、血清c-reactive protein(CRP)と負の相関関係を示したことから正常妊娠を保持していたAMが感染により活性が低下した可能性がある。AMが血液脳関門のタイトジャンクション関連蛋白質の発現を増強し機能を促進することが解っている。感染下において活性低下したAMを添加することで、そのタイトジャンクションの機能評価を解析し、AMが脳障害時に保護的に働く可能性について検討した。タイトジャンクション機能の評価には経内皮電気抵抗(Transerndothelial electrical resistance : TEER)を用いた。TEERはイオンの移動の視標であり、その値が高いものほどタイトジャンクション機能が高いことを示す。血液脳関門への内皮細胞への影響について血液脳関門のIn vitroのモデルを用いて検討した。感染を誘導するためにlipopolysaccharide : LPS100ng/mlを添加したところTEERの有意な低下を認めた(P<0.01)LPSによって低下したTEER値は6時間のAM(10^<-8>,10^<-7>,10^<-6>M)負荷により濃度依存性に抑制された。またBrain microvesselにおけるタイトジャンクション構成タンパク質:claudin-5の発現変化をウエスタンブロットで確認したところLPSにより生じた発現の低下をAMが抑制していた。免疫染色にてLPS, AMによるタイトジャンクション構成タンパク質occludinの構造の変化を確認したところLPSによって生じた形態変化をAMが抑制した。血液脳関門In vitroモデルにおける血液側の内皮細胞においてLPSによる血液脳関門機能の低下に対してAMはその機能を保護することが明らかとなり、その機序はタイトジャンクション関連タンパク質の発現増強に関与することが考えられた。炎症時に生じる脳血液関門機能障害に対してAMが保護的に働くことが示唆された。
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