研究概要 |
6名のSpinocerebellar ataxia type 6(以下SCA6)患者と6名の健常人を対象に視線運動の解析・検討を行った。頭部を椅子に固定した状態では、smooth pursuit, VOR in the dark, VOR-cancellationの3課題を行った。Smooth pursuit課題は全てのSCA6患者において障害されていた。VOR in the dark, VOR-cancellation課題は重症度の強い患者においては困難であったが、全体の平均では健常者と有意差はなかった。頭部を固定せず自由に動かせる状態では、1.自由に視標を追跡するcomfortable condition、2.頭部と同期したレーザーポインタで視標を追跡するhead-laser task、3.頭部運動を主体として視標を追跡するuse-head taskの3つの課題について検討した。Comfortable taskではSCA6患者も健常者も頭部運動をほとんど用いない、眼球運動主体の視線運動をしており、SCA6は眼球利得が低いため、視線利得としては有意に障害されている結果であった。Head-laser taskとuse-head taskではいずれも頭部利得の高い視線運動を行っていたが、頭部運動が大きくなるほど前庭動眼反射抑制が困難となる傾向にあった。そのため、頭部利得が相対的に低かったHead-lasertaskでは健常者との間に視線利得に有意差を認めなかったがuse-headtaskでは有意差を認めた。以上の結果より、小脳失調を認めるSCA6においては、頭部のなめらかな運動は障害されず頭部利得は保たれていたが、頭部と眼球の共同運動である視線運動においては有意に障害される結果であった。
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