研究概要 |
伝音性難聴の治療のため行われる外科的手術において,耳小骨の可動性の評価は,術式選択の際に重要な要素の一つであるが,その判断は医師の経験に依るところが大きく明確な基準がない.術中に耳小骨可動性を定量的に知ることのできる装置があれば,最適な術式の決定のみならず,治療による聴力回復の評価も術中に行う事が可能になると予想される.そこで,本研究では,小型で術中使用可能な耳小骨可動性計測装置を開発し,その臨床使用可能性を評価する事を目的とする. 本年度は,前年度に試作した耳小骨可動性計測装置の安定性を高めるため,耳小骨可動性計測プローブのアクチュエータに積層型圧電素子を,力センサに圧電セラミクスを用いて改良を行ない,側頭骨標本の計測を行なった.その結果,以下の知見を得た. ・改良型プローブは,改良前よりも計測の再現性が高く,精度も向上した. ・改良型プローブは,振動,熱等への耐性が向上し,ガス滅菌処理後も,その性能に変化が生じないため,臨床使用が可能と考えられた. 以上のように,術中に於いて耳小骨可動性計測が可能と考えられたため,実際に,アブミ骨可動性が正常と思われる患者の計測を行なった.その結果,術中にアブミ骨の可動性の定量的計測が可能であり,その計測結果は,側頭骨標本計測結果と類似したものであった. 今後は,更に術中計測を行ない,耳疾患の処置前後の可動性計測と聴力計測結果とをデータベース化し,術中に可動性計測を行なうことで,聴力改善度を定量評価可能なシステムを構築していく予定である.
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