研究概要 |
はじめに,Streptococcus pyogenesプロテアーゼにより修飾を受ける菌体表層タンパクのスクリーニングを行うために,同菌の産生する2種類のプロテアーゼ(SpeBおよびScpA)の組換えタンパクを作製した.併せて,それぞれのプロテアーゼ遺伝子欠失株を作製し,その菌体表層タンパクサンプルを調整した.また,各種S. pyogenes菌体表層タンパクの組換え体も構築した,続いて,野性株とプロテアーゼ遺伝子欠失株のディファレンシャル解析,並びに,各種S. pyogenes菌体表層組換えタンパクとSpeBおよびScpAプロテアーゼを反応させたところ,SpeBがフィブロネクチン結合タンパクであるFbaAおよびFbaBを消化することが示された.また,切断片のアミノ酸配列決定の結果,FbaAおよびFbaBは共にそのアミノ末端側が切断されることが明らかとなった.FbaAおよびFbaB分子について,そのアミノ末端部分を含め全ての領域を網羅する部分組換えタンパクを作製し,それぞれの機能を解析を行なった.その結果,SpeBにより切断されるFbaAおよびFbaBタンパクのアミノ末端には,それぞれの特異的抗体を強く誘導するエピトープが存在することが示された.さらに,FbaAおよびFbaBのフィブロネクチン結合領域が,配列の中央からカルボキシル末端側に分布することも明らかになった.このことから,SpeBは,上皮細胞付着と侵入に関与するフィブロネクチン結合領域を損なうこと無く,抗原性が高いFbaAおよびFbaBのアミノ末端領域のみを切断すること,そして,その結果として,S. pyogenesの抗原性を変化させて免疫回避能を亢進させる可能性を有することが示唆された.
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