研究概要 |
昨年度までに、PKRの酵素活性を欠質させるとSTAT1依存的に骨芽細胞の石灰化が阻害されることを見出した。本年度は、PKRの酵素活性を欠失した変異細胞株におけるSTAT1の役割について調べ、以下の成果を得た。 (1)PKRがSTAT1やRunx2と結合することによって骨石灰化を調節しているか? 野生型細胞株とPKR変異細胞株から調製したタンパク質を,抗STAT1抗体により免疫沈降した。その後,抗PKR抗体を用いてウエスタンブロット法を行い,PKR-STAT1間の結合を判定した。その結果,PKR変異細胞株と野生型細胞株の両方において,STAT1-PKR間の結合は認められなかった。同様の方法で,PKR-Runx2間およびSTAT1-Runx2間の結合を調べたが,両者間の結合は認められなかった。 (2)PKR変異細胞株において発現が亢進しているSTAT1は真に機能的であるか? STAT1にはTyr701とSer727の二箇所の自己リン酸化部位があり、それぞれがリン酸化することによりSTAT1の機能が調節されている。PKR変異細胞株において、STAT1のリン酸化の有無をウエスタンブロット法により判定した。その結果,野生型細胞株に比べて、PKR変異細胞株においてはSer727のリン酸化が恒常的に亢進していた。Tyr701のリン酸化に差は無かった。 以上の結果は、PKRがSTAT1やRunx2と直接結合することではなく、Ser727におけるSTAT1の自己恒常的なリン酸化を引き起こすことにより、骨芽細胞の石灰化を調節している可能性を示唆している。
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