研究概要 |
本研究では、ATP受容体およびATPの代謝産物であるアデノシンの受容体(A1,A2A, A2B, A3)のラット味蕾における発現を調べた。P2X4受容体が味蕾に発現していることをRTPCR、in situ hybridization、免疫組織化学を用いて明らかにした。さらに味蕾細胞に発現が見られたP2X4受容体について、他の味蕾細胞マーカーとの二重免疫組織化学をおこなった。P2X4受容体を発現する細胞は、味蕾の細胞型のII型細胞のマーカーであるgustducin、III型細胞のマーカーであるNCAMとは一致がみられなかった。P2X4受容体を発現する味蕾細胞は、gustducinを発現しないII型細胞あるいはI型細胞であることが示唆された。免疫電顕法を用いて詳細なP2X4受容体発現細胞の検索を行っている。 さらにアデノシン受容体に関しては、味蕾を含む舌上皮を用いたRT-PCRによりA1、A2A、A2B、A3のすべての発現がみられた。茸状乳頭、葉状乳頭、有郭乳頭を用いて免疫組織化学、in situ hybridizationをおこなったところ、いくつかのアデノシン受容体の味蕾内での発現を示唆する結果が得られた。 ATPがP2X2、P2X3受容体を介して味覚伝達機構に深く関与することが報告され(Finger et al.,2005)、ATPが味覚情報伝達物質として注目されている。本研究により味蕾において複数のATP受容体、アデノシン受容体の発現がみられたことで、味蕾内でATPが多様な情報伝達に関与することが考えられた。
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