研究概要 |
唾液腺腫瘍は経過とともに細胞の分化や脱分化が見られ、多様で複雑な組織像を呈することから、分類が複雑で最終診断に苦慮することが多い。唾液腺発生過程で、水輸送機能を持つAquaporin (AQP)が発現することより、唾液腺腫瘍細胞の分化にAQPが関与するという仮説を立てた。 今年度は、広島大学・高田隆教授より供与された多形性腺腫由来不死化細胞PA-hTERTを用いた。多形性腺腫は筋上皮細胞由来と考えられているため、まずPA-hTERT細胞でcytokeratinおよびvimentinの共発現を免疫蛍光染色で明らかとした。次に、PA-hTERT細胞の分化方向の検索を目的として、細胞極性を解析した。具体的には、上皮細胞で管腔側に発現するtight junction構成タンパクであるZO-1, claudin-1, claudin-2, occludinおよびamylaseの分泌について、免疫蛍光染色、透過型電子顕微鏡観察、Western blottingで検索した。その結果、ZO-1, claudin-1は、免疫蛍光染色で細胞突起間に強く発現していた。Western blottingではamylaseの発現が見られたが、超微構造観察では細胞質内には中間系filamentとmitochondriaが豊富であり、分泌顆粒様構造物はわずかに認められるのみであった。また、Ca^<2+>を用いて、tight junction proteinの発現を誘導したところ、amylaseの発現には変化がなかった。 AQPの発現については、channel proteinとしての機能が明らかにされているAQP5,6の発現を免疫蛍光染色で検索した結果、AQP6が細胞膜および細胞質に局在していた。現在は、AQP6抗体を用いたtarnsientの阻害実験による分泌能の変化を検討中である。
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