研究概要 |
歯周病関連細菌Porphyromonas gingivalisのFimA線毛は,宿主細胞への付着や自己凝集,他細菌との共凝集に関与する.本研究では,線毛遺伝子fimAの下流に存在するORF1〜4産物の機能と.温度による線毛発現制御機構の解明を目指している. 1).fimA下流遺伝子ORF1〜4産物の機能解析 前年度の研究から,ORF2〜4変異株ではFimA線毛依存性の自己凝集能を失っていること,ORF1は欠損させても野生型との顕著な差が見られないことが示された.本年度は野生株及び変異株から線毛を精製し機能解析を行った.その結果,ORF2〜4変異株からの精製線毛はGAPDH, fibronectin, collagenへの結合能を失っていることが明らかになった.また野生型の精製線毛にはORF2,3,4産物が存在することを確認した.ORF2〜4産物が実際にFimAへ線毛中に微量成分として存在し,付着凝集能へ寄与することが明らかとなったので,これらをそれぞれFimC, FimD, FimEと名付けた.前年度からここまでの結果をまとめてMicrobiologyへ投稿し,受理された. 現在fimA, fimC〜fimEをそれぞれ発現ベクターに組み込み,組み換えタンパク質の大量発現及び精製を行い,細胞外マトリックスタンバク質との結合能を解析している.これまでの結果では,FimAに加えFimC・FimDがcollagenとの結合能を示していることから,これらが付着因子として機能している可能性が示唆されている.一方FimEはcollagenへの結合能を示さなかった.fimE変異株ではFimC・FimDが発現しているにも関わらず,精製線毛には存在しないことから,FimEはFimC・FimDをFimAへ繋ぐアダブタータンパクとして働くのかも知れない.今後,他のタンパク質との結合能を調べると共に,免疫沈降法を用いてFimA〜FimEの相互の結合能を解析する予定である. 2).温度による線毛発現制御機構 様々な条件で温度変異株スクリーニング系の検討を行ったが,効率の良い系は得られなかった.
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