研究概要 |
本研究では、in vitroならびin vivoヌードマウスモデルを用いてフッ化ピリミジン系抗癌剤TS-1と放射線(RT)の併用療法の抗腫瘍効果発現のメカニズムの解析を行った。血管新生キット(クラボウ)を用いて血管内皮細胞を5-FU(1-10μg/ml),ギメラシル(1-5μg/ml),オテラシル(1-5μg/ml)あるいはRT(2-5Gy)単独処理または併用処理し、血管新生への影響を検索したところ、ギメラシル,オテラシルには血管新生抑制作用は見られず、RTは軽度血管新生抑制作用が見られ、5-FUは濃度依存的に著明な血管新生抑制作用が認められた。ただし5-FUとギメラシルの併用は、それぞれ単独の場合より血管新生抑制作用は顕著であり、さらに5-FUとRTの併用は、それぞれ単独の場合より血管新生抑制作用は顕著であった。また5-FUとギメラシルとRTの併用は、5-FUとRTの併用よりも著明な血管新生抑制作用を示した。次に口腔扁平上皮癌細胞B88をヌードマウス背部皮下に移植した後、TS-1(10mg/kg/day,3週間連日経口投与)とRT(1.5Gy/day,5回/週,3週間照射)をそれぞれ単独または併用にて治療したところ、併用療法にて有意な抗腫瘍効果が見られ、この際免疫組織染色にて残存腫瘍におけるDNA二重鎖切断修復関連因子Rad50、Ku70、Ku86、DNA-PKcsの発現の減弱が検出され、CD34陽性細胞(血管内皮細胞)数が減少した。さらにTUNEL法にてDNA断裂した腫瘍細胞が有意に増加した。以上より、TS-1とRTの併用効果は、Rad50ならびにDNA-PKcs複合体を介したDNA二重鎖切断修復機構の抑制による放射線増感効果と血管新生抑制作用により、強力な抗腫瘍効果を発現している可能性が示唆された。
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