研究概要 |
国立感染症研究所および日本大学歯学部附属病院の倫理委員会の承認を得て、日本大学歯学部附属病院歯周病科に来院した歯周病患者43名の歯肉縁上プラークからサンプリングを行い、テトラサイクリン(tet)耐性口腔レンサ球菌に関する解析を行った。まず、口腔内におけるtet耐性レンサ球菌の占有頻度を決定するとともにtet耐性レンサ球菌を単離し、16SrRNAシーケンスなどにより種の同定を行った。その結果、口腔レンサ球菌に対するtet耐性口腔レンサ細菌が占める割合は14.6%であり、大部分の被験者から多種多様なtet耐性口腔レンサ球菌が検出された。検出されたレンサ球菌としては、Streptococcus oralis, S.mitis,が多く、S.sanguinis, S.salivarius, S.milleli groupなども検出された。また、これら単離菌が有するtet耐性遺伝子はすべてtetMであり、同時にTn916-like elementを1つ以上有しているものがほとんどであったが、tetM以外のtet耐性遺伝子はPCRでは検出することはできなかった。以上より、口腔レンサ球菌におけるtet耐性付与はTn916上のtetMに依存しており、その保有頻度の高さと菌種の多様性から菌体間の耐性遺伝子の授受が推測された。 さらに歯周病患者への歯科用ミノサイクリン軟膏を投与の前後で口腔内tet耐性レンサ球菌の占有頻度がどのように変化するかを調べた。結果、投与前の12.2±15.7%.に対して投与後では35.8±24.5%)と有意に高くなっていた(P<0.01)。 本研究成果は、2006年3月第79回日本細菌学会総会(石川県金沢市)および2006年9月の国際感染症学会(サンフランシスコ、米国カリフォルニア州)にて発表された。
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