研究概要 |
研究の目的:急速な咬合高径の変更による下顎タッピング力調節特性を観察する上で,実際の食品を用いた実験を追加し,参考となる咀嚼運動の被調節特性を検索することにした.さらにTMD発症の観点から,男女差の影響を検索することとした. 対象と方法: 1.被験者は顎口腔系に異常所見のない有歯顎者24名(女性12名,男性12名,年齢23-49歳).被験者に19種の食品(直径26mm,高さ10mm)の咀嚼・嚥下を1食品につき1回ずつランダムな順で行わせた.各試行時の咬筋筋電図とMKGのデータを記録し,AD変換処理後に波形解析した(AcqKnowledge, BIOPAC System社製).分析項目は,食物の接触から最終咀嚼までの総筋活動量(A),咀嚼時間(B),咀嚼回数(C)と最大筋活動量に対する相対総筋活動量(%)(D)とし,統計的解析には,男女差,食品を主変動因子とする2元配置分散分析を用いた. 2.各試験食品の圧縮貫入試験を行い,テクスチャーを評価した(島津社製テクスチャーアナライザーEZテスト). 結果と考察:Aに影響を与えた因子は食品のみで(P<0.001),B, C, Dには食品と男女差双方が影響したが(P<0.001),それらの交互作用は認めなかった.またテクスチャー評価では,食品19品目は約1N〜90Nまでの幅広い硬さであり,A, B, C, Dの値全てが,硬い食品ほど大きくなる傾向であった.本研究の結果により,咀嚼運動は食品特性に依存することと,TMD発症頻度の男女差に関する有意義な情報が示された.
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