研究概要 |
1.バインダ量がTCPシートのアパタイト活性に及ぼす影響 バインダ量がTCPシートの生体内におけるアパタイト生成量および生成速度に及ぼす影響を明らかにするため,バインダ量を5,10,15,30mass%に変化させた場合のTCPシートをそれぞれ作製して,それらを擬似体液(ハンクス溶液)に浸漬して,その挙動を調べた.その結果,バインダ量はアパタイト活性に影響しないことが確認できた. 2.焼成温度がTCPシートの細胞挙動に及ぼす影響 焼成温度がTCPシートの細胞挙動に及ぼす影響を明らかにするため,焼成温度を変化させた場合(900〜1200℃)のTCPシートをそれぞれ作製して,シート上に骨芽細胞様細胞(MC3T3-E1)をそれぞれ播種し,1週間培養した.その結果,焼成温度が高くなるにつれて有意にTCP上の細胞数が増加することが判明した. 3.ラミネートタイプのTCPの作製とそのキャラクタリゼーション 新しいタイプの骨補填材を開発するため,テープキャストTCPシートを厚さ方向に7層積層し,圧縮成形・焼成を行なうことでラミネートタイプのTCPを作製した.また焼成温度(900,1000,1100,1200℃)がTCPラミネート材の機械的性質に及ぼす影響について検討した.結果として,ビッカース硬さは焼成温度が高くなるにつれて大きくなった.一方,曲げ強さおよび曲げ弾性係数は焼成温度が1100℃までは増加したが,1200℃では急激に減少した.曲げ試験後の破断面から1200℃の試験体は,中立軸付近において層問はく離が観察された.さらに1200℃の試験体の厚さ方向の微小部XRDから,試験体表面と中立軸近傍では結晶構造に違いがあることが判明した.このことから焼成温度が1200℃の場合,厚さ方向(層間)の結晶構造の不均質性により層間はく離が発生し,その結果,著しい強度低下を招いたものと推察された.
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