研究概要 |
本研究では床用レジンに二酸化チタンを混入することにより抗菌効果をもった義歯を開発することを目的としており,平成17年度は二酸化チタン単体を用いて試験片を作製し実験を行った.しかし二酸化チタン自体の活性反応により細菌など本来のターゲットだけではとどまらず,母材となるレジンそのもの自体を劣化させてしまうことで実用化に至らない結果となりていた.本年度は二酸化チタンを擬似体液中で処理を施し,放射状にアパタイトを析出させた二酸化チタンを用いることにより傾向の違いを考察した. 軟性裏装材として加熱重合型粘弾性レジンであるフィジオライ.ナー(ニッシン社)を用い,重合前にアパタイト被覆型二酸化チタンをそれぞれ0wt%,1wt%,5wt%,10Wt%,20wt%含有させた厚さ3mm,幅20×20mmの試験片を作製した.,供試菌株はEscherichia coli IID 560株を液体培地にて培養したものを使用した.また光触媒作用を増強するためブラックライト(波長360nm)を20cmの距離から照射し実験を行った.1.56X10^6 CFU(Colony Forming Unit)/mlに調整した菌液1mlを試験片上に塗布し,ブラックライトをそれぞれ2,4時間照射後の残存細菌数を算定した.菌数の算定には寒天平面培地上に規定時間経過後の菌液をそれぞれ塗抹し,37℃にて24時問培養後にコロニー数のカウントを行った.いずれの試料においても含有率,およ'びブラックライト照射時間が上がるにつれて残存細菌数は減少する傾向であり,二酸化チタン5%以上であれば照射時間4時間で死滅率が100%, また20%の試験片では2時間照射で死滅するという結果が得られた.二酸化チタン単体のものとアパタイト被覆型では大きな差は認められなかった.今後は両試験片を用いて物性試験を行うことでアパタイトの効果が発揮されているのか,また軟性裏装材としての特性が損われていないかを実験していく必要性が考えられる.
|