研究概要 |
【目的】口腔扁平上皮癌は強い局所浸潤能を有しており、特に顎骨浸潤の有無は臨床上重要な問題点となる。骨浸潤には破骨細胞性骨吸収が重要な役割を演じていることがすでに報告されている。そこで我々は骨浸潤の詳細なメカニズムを明らかにするため、口腔癌組織における破骨細胞関連サイトカインの発現解析を行った。 【対象と方法】対象は平成17年4月から平成19年1月に東京歯科大学千葉病院口腔外科を受診し、顎骨切除を施行した口腔扁平上皮癌患者で、本研究に同意を得た17例(男性8例、女性9例、平均64.5歳)である。これらの手術標本から病理学的検索を行い、顎骨非浸潤群6例、顎骨浸潤群11例に分類した。解析方法はパラフィン標本を用いて免疫組織化学的染色法を行い、腫瘍細胞における破骨細胞関連サイトカイン(IL-1α,IL-1β,IL-6,IL-11,IL-18,PTHrP,TNF-α,TGF-β,RANKL,RANK,OPG)の腫瘍内発現を評価した。また手術標本より採取した組織サンプルからcDNAを作製し、定量RT-PCRを行い各サイトカインのmRNA発現量を定量的に観察した。 【結果】免疫組織化学的染色において、IL-1α、IL-6、IL-11の発現が顎骨浸潤群で有意に高かった。またOPGの発現が顎骨非浸潤群で有意に高かった。また定量RT-PCRにおいて、IL-1α、IL-6、PTHrPのmRNA発現量が顎骨浸潤群で有意に高い結果となった。しかしその他のサイトカインでは明らかな有意差は認められなかった。 【考察】口腔扁平上皮癌が顎骨へ浸潤するためには、IL-1α、IL-6、PTHrPの発現が重要な役割を演じているものと思われた。またOPGの発現が癌の進行を抑制していると考えられた。以上より破骨細胞関連サイトカインの発現解析がヒト口腔癌における顎骨浸潤能を評価し、診断、治療に応用できる可能性が示唆された。
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