研究概要 |
アデノシン複合体は、多くの動物実験や臨床研究によって様々な鎮痛効果が報告されている。本研究はアデノシン複合体である、アデノシン三リン酸の持続静注が、口腔外科領域の術後痛にたいして有効であるか検討した。 対象者は外科的矯正手術予定患者22名を無作為にATP群・生食群の2群に分けた。全身麻酔の導入・維持はプロポフォール・フェンタニル・ベクロニウムでおこない、ATPおよび生食は導入直後から手術終了まで持続静脈内投与をおこなった。ATPは160μg/kg/minとした。術後鎮痛はモルヒネを使用し、患者主導型除痛システム(PCA)を用い、一回投与量1mgロックアウトタイム10分とした。 術後の鎮痛効果はPain scale(verbal rating numeric pain scale)の変化と,PCA開始,24,48,および72時間後のモルヒネの消費量で判定した。ATPの抗炎症作用の判定として、白血球数、好中球数、CRPを術前、手術終了時、24、72時間後に測定した。また、副作用として鎮痛効果の判定時点に合わせて鎮静度および悪心・嘔吐の発生頻度と程度を測定した。 手術終了直後のモルヒネ消費量は、5.3±2.4mgであったに対し、ATP群は、2.5±3.2mgであった.これはATP群は、生食群のモルヒネ消費量を52.9%減少させた。さらに、ATP群は生食群のモルヒネ消費量を24時間後で41.1%、48時間後で48.0%、72時間後で51.3%と減少させた。白血球数は術後24時間値に有意差が認められ,ATP群は生食群に対して白血球数を14.1%減少させた。Pain scaleは、各測定時間で両群間に有意差はなかった。副作用は両群で有意差はなかった。 今回我々は、外科的矯正手術における術中ATP持続静脈内投与を特に副作用の出現もなく安全に行い,術後のモルヒネの消費量を減少させることを認めた.術中ATP持続静脈内投与は術後鎮痛に対して有効である.
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