研究概要 |
歯の移動に伴い、骨吸収機構活性化が惹起され、また不快な痛みが出現する。両者は、ほぼ同時に出現することから何らかの関連があるものと推察される。本研究においては、カルシウム透過性カチオンチャネルであり、機械的刺激、酸、熱により活性化されるTransient potential vanilloid:TRPVsが破骨細胞におけるカルシウムに対するセンサー/レセプターとして発現、機能し、痛みにも関していることを仮説として研究を開始した。 (1)破骨細胞におけるTRPV1,2タンパクの発現について: (in vivo)4週齢ddyマウスを灌流固定後、脛骨骨頭を採取、脱灰後、8μm切片を作製し、抗TRPV1,2抗体を用いて、ABC法により検索した。両タンパクとも、破骨細胞のみならず、骨芽細胞、骨髄中の多核(2,3核)細胞にも認められた。破骨細胞における局在は、TRPV1は、細胞質全体的な局在が認められたのに対してTRPV2は、細胞膜に強い発現が認められた。 (in vitro)6週齢ddyマウスより骨髄細胞を採取、M-CSF,RANKL刺激のもとで5日間培養し、破骨細胞様細胞を形成。抗TRPV1,2抗体にて免疫蛍光染色ならびにTRAP染色の二重染色を行って居るところである。しかしながら、多核破骨細胞様細胞の形成が思わしくなく、蛍光染色にまでは至っていない。今後、M-CSF,RANKL濃度、培養条件を再検討中である。 ※また、培養条件改善後に、形成された破骨細胞をプレートより剥離し、total RNAを抽出し、TRPV1,2特異的プライマーを用いてRT-PCRを行い、破骨細胞におけるTRPV1,2 mRNA検索を予定。 (2)骨組織におけるTRPV1,2mRNAの発現について: 6週齢ddyマウス脛骨よりtotal RNAを抽出しTRPV1,2特異的プライマーを用いてRT-PCRを行った。TRPV1,2mRNAは、骨組織に特異的に認められた。今後は、特異的に認められたバンドについて、定量化を行い、他の破骨細胞特異的マーカー(カテプシンK,TRAPなど)と比較検討する予定である。 破骨細胞において、TRPV1,2が認められたことにより熱(炎症)、機械的刺激により本レセプターが活性化、チャネルの開放が生じ、細胞内へカルシウムが流入することにより細胞が活性化するものと考えているが、実験技術等の改善を図り、さらなる論証を獲得すべく研究を遂行するつもりである。
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