研究概要 |
これまで3歳から8歳の小児の音声を周波数解析し,小児構音発達の特徴を研究してきた。その結果,各年齢群に性差は認められなかったものの,母音間と年齢間には有意な差があることが明らかになった。一方,超・極低出生体重児は正期産児に比べると口腔機能発達が遅れる傾向がみられるため,その保護者は出生直後から育児不安を抱いていることが多い。そこで,構音発達の初期となる3歳児における正期産児と極低出生体重児について比較,検討した。 方法は,母音+子音+母音(VCV音節)の構造をもつ無意味音節構音22語を発声させ発語明瞭度検査,周波数分析を行った。発語明瞭度検査は各子音部の不明瞭度を歯科医師5名が聴取して,各々明瞭を0,不明瞭を1として2段階評価で判定した。また周波数分析は子音の後続母音の第1フォルマント周波数(F1)および第2フォルマント周波数(F2)を計測した。 その結果,発語明瞭度は超・極低出生体重児で有意に不明瞭であり,周波数分析についても正期産児のF1およびF2値の平均より1S.D.以上外れていた音節が極低出生体重児では多くみられた。 以上のことから3歳児は正期産児と比較して極低出生体重児の構音発達が遅い傾向がみられた。咀噛機能や咬合力といった口腔機能は6歳頃に追いついてくるため,構音についても同時期に明瞭になってくると考えられた。しかし,個人差も大きいことから今後も被検児数を増やして検討を行っていく必要があると考えられた。
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