研究概要 |
健康ボランティアを対象とした実験的な検討による、好気性および通性嫌気性細菌の手洗い前後の細菌の評価では、石鹸による手洗いではアルコール性速乾性手指消毒薬使用よりも、有意に多くの細菌の種数と分離コロニー数が計測された。薬剤感受性、DNAの型別を行った結果,院内感染起因菌と異なるパターンである傾向がみられている.この成果については論文発表予定である。 現在、複数の病棟にて病棟看護師における,石鹸による手洗いを制限し、アルコール性速乾手指消毒薬の使用を奨める病棟と従来の手洗いを積極的に行うタイプの病棟間での院内感染の発生についての比較検討を行っている. 現在のところ意味の在る差が認められていない.芽胞形成菌による院内感染の広がりと併せて,評価を継続している. 健康ボランティアの保菌する咽頭、鼻腔および、手指から分離したブドウ球菌と健康ボランティアから分離した血液中の血漿および貪食細胞(多型核白血球および単球)と反応させ,オプソニン化および,貪食についての反応を検討した。分離菌は咽頭、鼻腔、手指のそれぞれで最も優勢を占めていると判断されるブドウ球菌について同じ被験者と異なる被験者12名の血液中の貪食細胞による貪食を比較した。その結果,分離された菌の保菌者であるか否かということより,菌自体の被貪食性の差違による影響が大きいという傾向であった. したがって,医療従事者による石けん手洗い自体がカテーテル感染の有力なリスク因子であるという,確定的なデータは現在までのところ得られていない.
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