研究概要 |
1.薬剤の血管外漏出に対する罨法の効果に関する糖尿病ラットを用いた実験的研究 糖尿病患者は創傷治癒が遅延する傾向にあるため,本来血管内に投与されるべき薬剤が血管外に漏出するなどした場合,難治性の皮膚傷害に移行する可能性がある.そこで本研究では,このような糖尿病患者を想定した薬剤の血管外漏出時の看護ケアについての基礎的知見を得ることを目的とし,糖尿病の病態動物モデルを用いて実験的研究を行った.その結果,組織学的検索では,薬剤が血管外に漏出した部位において,冷罨法群では,対照群に比べ,炎症性細胞の浸潤などの組織傷害の程度が軽度であり,温罨法では,対照群および冷罨法群に比し,炎症性細胞の浸潤が強く,筋壊死像が認められるなど,組織傷害の程度が重度であった.このことより,創傷の治癒が遅延する傾向にある患者において,薬剤(メイロン)が血管外に漏出した場合,温罨法よりも冷罨法の方が組織傷害を抑制する点で有用であると考えられた. 2.ビンカアルカロイド系抗がん剤の血管外漏出に伴う皮膚傷害に関する実験的研究 現在,血管外に漏出した際,その対処方法として温罨法が勧められているビンカアルカロイド系抗がん剤について,本剤漏出時の皮膚傷害の機序(特に初期変化)を,実験動物を用いて組織病理学的に明らかにすることを目的に研究を行った.光学顕微鏡的検索では,薬剤漏出後の温罨法適用の有効性は示されず,むしろ皮膚傷害を憎悪させる危険性が示唆された.現在,電子顕微鏡標本を作製し,抗がん剤漏出時のウサギ皮膚の初期変化について,検索中である.
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