研究概要 |
本研究は,継続的に基本健康診査を受診している地域住民を対象に,糖尿病関連検査の初回異常指摘者と正常者の糖尿病予防に関連するソーシャルサポートを比較することで,糖尿病発症予防につながるソーシャルサポートを明らかにすることを目的としている。 平成18年度に行った質問紙調査では,有効回答者1,361人(有効回収率44.5%)に占める初回異常指摘者の人数が非常に少なかった。そのため,平成19年度は,特に疾患を有していない健康者と血糖値の異常指摘者で,ソーシャルサポートの比較の分析を行った。その結果,男性は健康者で,テレビ等のマスメディアから情報を得ている割合が異常指摘者よりも有意に高く,女性は異常指摘者で,保健師や看護師から健康情報を得ている割合が有意に高かった。また,平成17年度に実施した質問紙調査の検討の際,他の生活習慣病を含めて分析しても,糖尿病の有無のみが健康行動の実施に影響していた。このことから,平成18年度の調査においても生活習慣病別のソーシャルサポートを検討したところ,糖尿病者では,健康に対する助言・支援者がいるという認識および,一緒に運動してくれる人がいる割合が有意に低かった。 上記の分析の他,平成17・18年度の結果を踏まえ,平成18年度の調査対象者の中から協力者を募り,糖尿病等の生活習慣病予防におけるソーシャルサポートの有効活用に関する検討会を開催した。話し合いでは,健診体制の課題,健診結果など健康情報源の活用に関する課題,地域での広報活動に関する食生活改善推進員への期待などが挙げられた。 以上の成果から,糖尿病者は,他の生活習慣病と比較しても低いソーシャルサポート状況にあることが明らかになり,予防段階においても,健康情報源に対する認識を高めるとともに,地域の健康づくり体制などの支援情報の広報を強化し,活用できるサポート資源を持てるよう支援する必要性が考察された。
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