本年度は、来年度以降の本調査のパイロットスタディとして位置づけて、災害看護および健康危機管理における看護職の役割に関する先行研究の検討を行う一方、(1)災害を経験した市町村での保健医療関係職種からのインタビュー(2)災害を経験した市町村を支援した個人やボランティア団体へのインタビュー(3)災害の経験を踏まえて現在危機管理体制に力を入れている病院と地域の連携体制についてインタビューを行った。 まず、(1)については、新潟県の中越地震で被害を受けた旧小国町(現長岡市)において、インタビュー調査を行った。保健医療職種から得られた知見として、従来の研究でも指摘されているように、常に医療的な処置や見守りの必要な在宅療養者や障害者を最初に行い、次に災害の影響を受けやすい高齢者や慢性疾患患者、乳児を持つ家庭などの把握と支援を行うなど、優先的に関わるべき対象のリスト化が有効であったこと、それには、災害前の保健医療職者の日常的な連携体制が影響することがあきらかになった。また、災害に遭った住民のニーズとしては、災害直後の「迅速で正確な情報を獲得する必要性」「地震による被害の拡大を最小にし、2次被害を防ぎ、より安全な場所へ避難するニーズ」から、避難生活に入り「集団生活のストレスを軽減するニーズ」や仮設住宅へ入居してからの「避難生活においてもコミュニティを維持するニーズ」などがあげられた。 また、調査(2)については、同じく新潟県中越地震の時に災害復興支援に参加したボランティアにインタビュー及び質問紙調査を行った。対象者のうち、半数を超える者が過去にボランティアの経験を持たず、災害の報道をきっかけに参加していた。また、ボランティアのうち、4分の1は、何らかの専門的な資格を有していたが、それ以外のものは資格を有しなかった。また、ボランティアに参加した者のほぼ全員が機会があれば災害復興ボランティアとして他の地域で活動したいという希望を持っていた。しかし、約半数が自分が行ったボランティア活動についてはあまり満足していないと答えた。このことから、災害時は多くのボランティアの活躍が有効である一方で、ボランティアの力を有効に活用し適材適所に配置するためには、受け入れ窓口の整備や、活動場所への振り分け、連絡体制の一本化などを災害初期に構築することが必要であることが示唆された。 さらに調査(3)を行い、災害時の危機管理体制の構築にあたって、阪神淡路大震災を経験した病院と地域において震災後、災害の経験がどのように危機管理体制に影響を与えたかについてインタビューを行い、現在分析をしている。
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