研究概要 |
【目的】睡眠呼吸障害(sleep disordered breathing:SDB)は大きないびき,繰り返す睡眠中の呼吸停止とともに、非常に強い日中過眠をきたす疾患群であるが,精神生理機能の劣化に関するメカニズムに関しては不明な点が多い.事象関連電位(event-related potential:ERP)は、外的あるいは内的な事象に時間的に関連して生じる脳の一過性の電位変動であり,近年認知生理機能の客観的評価方法として注目されている.本研究では,SDB患者の精神生理機能評価にERPを応用することにより、精神生理機能の劣化に関するメカニズムの解明を目的とした. 【方法】SDB患者のERP(P300)潜時の測定を行った(刺激は聴覚刺激であるオドボール課題を用いた).P300と睡眠ポリグラフ検査で得られた各パラメータ(無呼吸低呼吸指数:AHI、酸素飽和度低下指数:ODI、覚醒反応指数:ArIなど)を比較検討した. 【結果】SDB患者群ではコントロール群に比し,P300潜時が有意に延長していたが,呼吸障害の重症度とは相関を認めなかった. 【考察】SDB患者での認知機能については,P300を用いて客観的に評価できる可能性があることが示唆された.今後は呼吸障害のタイプ(閉塞型,混合型.中枢型)や閉塞様式(鼻閉型,軟口蓋型,舌根型,扁桃型,混合型)の差異が,P300の延長に与える影響について,さらなる検討を行う予定である.
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