研究課題
特別研究員奨励費
献血にのみに依存しない血小板輸血製剤の供給を実現することが希求されている背景から、江藤研究室では、iPS細胞などの多能性幹細胞から不死化巨核球前駆細胞株imMKCLを分担研究者の中村らが樹立した。本細胞株は新たな血小板供給源として有力視されている。一方、静置培養条件ではこの巨核球株の増殖後の成熟が栄養細胞への接着依存的で、大量培養が必須な液体培養条件での成熟が不完全のために生体内の巨核球に比し、血小板産生効率が極度に低いことが課題だった。そこで、巨核球の成熟度合いを可視化し、血小板産生効率を上げる薬剤を探索するためのハイスループットスクリーニング系の開発を進めた。巨核球成熟に伴って発現が高くなることが知られているβ1チューブリンの遺伝子座に蛍光発色レポーター遺伝子をCRISPR/Cas9法によって不死化巨核球前駆細胞株imMKCLに組み込み、成熟過程の可視化に成功した。本レポーター巨核球細胞株を用いてハイスループットスクリーニングシステムを開発し、5000種以上の薬剤ライブラリから血小板産生を促進する候補薬剤を複数種(Wnt-C59,TCS-359など)同定した。 候補薬剤の多くが既知の機能として知られた薬剤であっても、実際には芳香族炭化水素受容体 (aryl hydrocarbon receptor : AhR) 経路を競合阻害する機序によって、巨核球成熟を促進し、血小板産生のための細胞環境を形成することを発見した。江藤研究室では、ランダムスクリーニングによってAhR経路の抑制が巨核球成熟に重要な役割を担っていることを発見し(Cell, 2018)、それを元にAhRシグナルの重要な知見を集積しつつあり、改めて候補者のデータの重要性がが再確認された。 さらに候補者は本研究で、AhR経路には関わらない別の巨核球成熟促進経路の存在も見出した。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Blood Advances
巻: 2(17) 号: 17 ページ: 2262-2272
10.1182/bloodadvances.2018019547