研究実績の概要 |
特別研究員Hartwig 氏は、最新の理論計算に基づく超新星元素合成の結果を用いて、宇宙に生まれる第二世代の星々に特徴的な元素組成パターンを明らかにした。さらに、膨大な分光観測サンプルの中から銀河系で最も古い星々を抽出するための化学診断手法を提案し、主著論文として発表した(Hartwig et al. 2019, ApJ)。最近ではこの抽出作業に機械学習を導入し、バナジウムやヨウ素などのキーエレメントを同定している。考案した分光化学診断手法は、さらに次のような判定にも適用できることを示した。個々の古い(すなわち低金属量の)星が、一回の超新星爆発により生成された重元素のみを含むのか、あるいは複数回の超新星爆発により重元素汚染されたのかを推定する指標も与える。この指標はすでにドイツの研究グループらが採用し、低金属量星のクラス分類に用いられている。 つぎに、炭素過剰とよばれる特殊な種類の星の生成過程について新たなモデルを提唱した (Hartwig & Yoshida, 2019, MNRAS )。古い星の元素組成はその親星の超新星爆発時の元素合成量が正確に反映されているとするのが標準的な仮説であろり、上記の成果もその仮説に基づく。しかし、 Hartwig氏や他の複数の研究者が行ったこれまでの研究からは、生成され放出された各元素が星間ガス中で厳密に一様に混じり合うわけではないことも示唆されている。Hartwig 氏はこの未混合率に着目し、これまでの観測から示唆される炭素過剰星の生成頻度は、そのような非一様なガスから生まれる星々の頻度でもあると考えた。つまり、星間ガスの中でも炭素過剰な部分から低質量星が生まれやすいと提唱した。Hartwig氏はここまでの研究成果を精力的に発表し、特に3つの国際学会で講演を行った。
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