研究課題
特別研究員奨励費
本研究プロジェクトの大命題は、「高泌乳牛の受胎性の向上」である。ウシの2大繁殖技術である人工授精(AI)と受精卵移植(ET)に関わる子宮・卵管の精子と受精卵の「受入れと排除」を制御する母体免疫システムを解明することで、AIとET技術を改善する技術開発の展望を得ることを目的とした。以下の4つの視点で段階的に進めた。1. 体外培養モデル(精子の作用):子宮内へのAIを想定して精子を子宮上皮細胞培養系で共培養すると、子宮上皮はTLR2/4を介して精子を認識してTh1型反応(炎症型)を起こすことが明らかとなった。また、卵管環境は好中球の精子への貪食は抑制するが、大腸菌や異物への貪食は抑制しないことがわかった。2. 体外培養モデル(初期胚の作用):体外受精由来の初期胚を卵管と子宮の上皮細胞培養系で共培養して発生させた。共培養上清はPBMCのTh2型反応(寛容型)を誘導した。3. 体内の子宮分泌モデル: D7にカテーテルを用いて超低濃度のIFNT (100pg/mL)を子宮に入れ、24 h後に回収した。回収液をプロテオーム解析したところ、自然免疫関連タンパク群とエクソゾーム(miRNA含む)が大きく増加していた。4. 人工授精直後の子宮内の精子と免疫細胞動態: D0の子宮内にAIして、直後から子宮内ミニ灌流で精子と好中球の出現動態をリアルタイムで観察した。1h後に多くの精子は排卵側の子宮角を既に通過しており、この時、好中球は出現していなかった。一方、6h後精子は少数であり、好中球が劇的に増えていた。10h後この炎症反応は既に収拾していた。以上の一連の実験モデルと卵管・子宮の免疫応答のコア部分の解明は、それらを活用したウシ受胎性の向上に向けた技術開発への基盤となる。
令和元年度が最終年度であるため、記入しない。
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