臨地実習カリキュラムは医療の変化に応じて組み立てる必要がある。近年、病院での臨床検査技師の立場は変化し、チーム医療や症例カンファレンスへの参加が求められている。これらに必要な能力として共通しているのは、検査学の理解に加えて患者状態を多角的に把握することであり、検査分野を横断的に学べる実習カリキュラムが必要である。本研究の目的は、臨地実習カリキュラムの再編成により生化学・血液分野合同実習カリキュラムを作成し、どのような効果をもたらすかを評価することである。 本研究では、日本臨床衛生検査技師会が発刊した「臨地実習ガイドライン2013」を参照し実習カリキュラムの見直しを行った。その結果、現行カリキュラムでは緊急検査の指導時間が不足していることが判明した。緊急検査はすべての検査工程および結果解釈を担当者一人で行うため、検査学理解と検査値解釈の両スキルが求められる分野である。そこで新規カリキュラムとして検体提出側(A)と検査実施側(B)に分かれて緊急検査を体験する「緊急検査シミュレーション実習」を導入することとした。Aは溶血、ライン血、EDTA添加のいずれかの生化学検体を作成、提出し、その後は臨床と同様に電子カルテにて結果を待ち、結果問い合わせの電話連絡を行った。Bは緊急検査を実施してパニック値に対処し、電話対応ではパニック値報告、検査状況の説明、患者情報の収集、再採血依頼等を行った。実習終了後は指導技師を交えてディスカッションを行い、緊急検査における重要点をまとめた。導入効果の評価として、緊急検査における測定手順、報告方法、パニック値等の10項目について、3段階評価の自己点検シート(評価1 : まったく知らない、評価2 : 聞いたことはある、評価3 : よく知っている)を作成し、実習前後で実施した(n=31)。「パニック値に遭遇した場合、どのように対処したらよいか知っている」の問いに対し(評価1/評価2/評価3)、実習前は50.0%(16名)/40.6%(13名)/9.4%(3名)であったが、実習後は0.0%(0名)/37.5%(12名)/62.5%(20名)と有意に改善した。新規カリキュラムにより、パニック値の概念とその対応についての理解が深まると同時に、その難しさを実感した様子であった。今後も本実習により、常に臨床側および患者の存在を想像できる臨床検査技師を育成したいと考えている。
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