科学的探求のプロセスで、科学的思考力・表現力を養うために、相手が納得する表現をつくるワークシートを組み込んだ授業を開発して実践し、その有効性を検証すること。またこの実践により、思考することの価値を再認識し生徒1人ひとりが自己肯定感や効力感を持ち、積極的に授業に参加しようとする姿勢を育むことを目的として実践研究を展開した。 2017年度は、1学年5クラスを対象に、「植物の世界」と「身の回りの物質」の単元で実践した。前者では、「既習事項や経験知などの根拠を示して相手を納得させる」要素を組み、「主張・根拠・主張に対する疑問」で色分けした「短冊」を使用した。また後者では、色分け短冊と連動したワークシートを活用し、根拠・主張・主張に対する疑問を明記したり、根拠の信頼性について確認させ、自分の主張に最も影響があった根拠を再度意識させたりした。 授業実践後、146人を対象に行った調査では、97%の生徒が「根拠を振り返り結論を考え直しやすい」と答え、93%の生徒が「疑問を解決することで考えが深まった」と答えた。思考や判断を可視化、操作化することによって、試行錯誤する場面が増え、発言量が増えたことなど、生徒が積極的に授業に参加する姿が見られた。また、短冊を色分けすることで、根拠を明らかにした主張づくりができた。しかし、相手を納得させる説明をするまでは至っていない。自分の意見が相手に影響を与え、納得させることができた時、生徒は思考することの価値を実感し達成感を感じることができるであろうと考える。また、その経験の積み重ねが自己肯定感の涵養にもつながると言える。それには、ワークシートや思考ツールである色分け短冊を活用して自らの思考や判断を可視化操作化し、さらに判断した根拠の信頼性を確認し、論証することを習慣的に実践することなどを通して、自分の主張に自信を持てるようにすることが必要であると考える。 本研究の成果は、日本理科教育学会第67回全国大会と、日本理科教育学会第64回東海支部大会にて発表を行った。
|