本研究は、東京大学教育学部附属中等教育学校で、総合的な学習として行っている「課題別学習」のシラバスをデザインすることを目的にした。課題別学習「体感する数理2」という講座において、生徒が日常の中にある数理を体感していくことを通して、数学や理科のおもしろさ、有用性を実感させることを目指した。 この授業は、3年生と4年生(中学3年生と高校1年生)の2学年が混じった10~15名の少人数クラスで行っている。学年によって、数学や理科の既習事項が違っている。そこで、上の学年の生徒が既習内容を下の学年に説明しながら授業を行うプログラムを作成した。既習事項であっても、上級生が下級生に説明しようとすると、上手く説明できないこともある。上級生にとっては学びなおしの機会になり、下級生にとっては、これから学ぶ数学への興味関心を持つきっかけになることをねらっている。 作成したシラバスで扱う課題の例を挙げると、「折り紙を使った立体図形の作成」「立体万華鏡」「万華鏡のミラーの形を三角柱から違う形に変える」「ビフォンの針の実験」「正四面体を使った平面の敷き詰め」「東京スカイツリーから見える景色を数学で描く」「ブラックライトを使って、見えない光を見る」「振り子の実験」「太陽光発電」「ジグザグ立方体(栃木県立美術館に展示されている堀内正和氏製作)を考察する」がある。 どの課題も、実験や活動によって浮かんだ疑問点を自ら解決するために、工夫して考える、生徒間の学び合いによって深める力を付けていくことを重視した。また、それぞれの分野で造形の深い専門家を招いて講義を受け、科学館や体験館を訪問して、数理のおもしろさを体感することをシラバスの中に含めている。 教科書で学ぶ数学は、それぞれの単元ごとに完結していて、なかなか単元間のつながりを感じることが難しい。この「体感する数理2」の授業を通して、日常生活の中にある事象を数理の観点から捉え、単元間のつながりを含めて、数学や理科のおもしろさを実感できるように工夫した。
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