核磁気共鳴装置(NMR)において温度可変測定を行う事は、速度定数等の物理量を求める以外にもガスハイドレートやLi電池等の低温環境における構造解析に用いられるなど、近年需要が高まってきている測定である。しかしながら、現在-50℃以下の低温ガスを安定的に供給する場合、1000万円以上の非常に高価な機器を導入する他、液体窒素中に銅管などを浸して窒素ガスを供給して低温ガスを生成するのが一般的な手法となっている。この場合安定供給出来る時間は、47L窒素ガスボンベで1時間程度であり、液体窒素と気化器を利用して窒素ガスを供給する場合も、100Lの液体窒素で4・5時間しか低温環境を維持することが出来ない。本研究は窒素ガスの代わりにコンプレッサーで長時間安定的に生成出来る乾燥空気を用いることで、安定した低温環境を構築することとした。 まず既存の低温ガス供給システムを改良することで、低温ガス生成後から供給場所までの熱損失について、真空二重管フレキチューブを用いて低減させることにした。その結果、生成した低温ガスには液体酸素と液体窒素が含まれていることが判明した。これにより低温ガスの流量が安定せず温度調整が困難であった為、低温ガスに常温の乾燥空気を混入させ液体酸素と液体窒素を気化させる条件検討を行う事にした。検討を行った結果、常温の乾燥空気を20L/min混入させることにより液体酸素と液体窒素の発生が抑えられ、-130℃の低温ガスが安定的に供給出来ることが判明した。 今後は研究者に対して講習などを行い、本研究で改良したシステムの利用を促進していく予定である。
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