研究目的 : 走査電子顕微鏡観察するためには試料に導電性を持たせないと綺麗な画像検出が困難である。イオン液体は導電性を持ち合わせており、揮発性が極めて低いため非導電性試料にコーティングすることにより走査電子顕微鏡測定が可能になる。現在生物サンプルにイオン液体をコーティングする事例は多いが、無機化合物にコーティングする事例が少ない。イオン液体はカチオンとアニオンの構造や組み合わせにより数百万通りあり、適切なイオン液体を利用するのが困難である。そこでイオン液体を無機化合物に用いた走査電子顕微鏡測定による適合性のデータベース構築を考えた。 研究方法 : 本研究では無機化合物を銅箔テープに付着させ、その上にイオン液体をコーティングし、1日乾燥させてから測定を行った。①希釈液をエタノール又は水を利用し、同一のイオン液体を選択し濃度を変えて測定を行った。②カチオンが同一にてアニオンは異なるイオン液体の導電率が10倍ずつ異なる4種類を選択し濃度を変えて測定を行った。③カチオンが異なりアニオンは同一の導電率が近いイオン液体5種類を選択し濃度を変えて測定を行った。 研究結果 : ①希釈液の水はエタノールより表面張力が高いため、エタノールより濃度を低くコーティングを行えることがわかった。②同一濃度のイオン液体の場合は、導電率が高いイオン液体の方がチャージはおきにくく、導電率が低いイオン液体の方がチャージはおきやすかった。③カチオンが異なりアニオンは同一のイオン液体の場合は同濃度の測定に差は表れなかった。今回の結果では1-エチル-3-メチルイミダゾリウムジシアナミドが適していた。イオン液体が無機化合物の表面に残留している場合もあり、除去作業が必要になると感じられる。
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