【研究目的】静岡大学工学部は、全学科新入生を対象にものづくり基礎実習を行っている。ここでは、メカトロニクス(ロボット)実習を通じて工学教育の導入を行っている。具体的に、回路実習、プログラム実習、マイコン基板製作実習、ロボット製作実習、まとめとしてロボットコンテストの実施である。しかし、使用教材がロボット教材のため、化学系学科の学生には専門との関連に疑問を持ち、モチベーションが上がらない者がおり、授業アンケートでも裏付けられている。 そこで、実習のロボットコンテストのテーマとして、化学分析で用いる吸光光度計をマイコン基板等で自作し、定量分析を行う競技を検討する。これにより、化学系学科の学生が化学とマイコン制御の関係に興味を持ちやすくし、ものづくりの楽しさや分析装置の原理への関心などが高まることが期待される。 【研究方法】定量分析の対象は、種々検討して存酸素量(DO : Dissolved Oxygen)の測定とした。測定法は、妨害物質や化学的妨害が少なく市販キットが充実している酸性インジゴカルミン吸光光度法とした。測定は、LEDを光源に検出器としてフォトトランジスタを用い、透過する光の強度を迅速に測定する。制御や測定は実習用マイコン(Arduino UNO)を用いた。資料測定装置は、市販のDO測定用アンプルが入るように3D-CADで設計し、三次元加工機により、ケミカルウッドを材料として切削加工で製作した。 【研究成果】上記の装置で種々の濃度のDOを測定し、得られた検量線をもとにプログラムを作成し、市販のDO用吸光光度計と同等な結果を出せる試作の吸光光度計が完成した。測定結果の表示法の工夫でコンテスト用のテーマとしても問題ないことが分かった。 【今後の課題】実際のロボットコンテスト実習のテーマに提案し、実践することによって、化学系学科の学生の授業アンケートの変化につながるかを検討する。
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