○研究目的 : 産業用ロボットケーブルは、導体、絶縁体および被覆材から構成されており、導体は素線を撚った撚線で構成されている。産業用ロボットは、高速動作を繰り返すため、素線同士の摩耗によりケーブルが断線することが知られている。しかしながら、素線の線径は100μm以下と極細であるため、既存の摩耗試験法では評価することができない。そこで本研究では、素線の摩耗量を電気抵抗で評価する試験機を開発し、その摩耗特性評価方法を確立することを目的とした。 ○研究方法 : 試料には、純度99.9%の純銅線を用い、硬さの異なる二種類、硬銅線および軟銅線を準備した。硬銅線は、線径10mmから80μmまで数段階の伸線加工により作製したものであり、軟銅線は、硬銅線に対してひずみ除去処理(673K×7.2ks)を施したものである。各銅線を回転させた純銅ディスクの円周部に接触させることで、摩耗試験を実施した。ディスク円周部の表面は、耐水研磨紙2000番で仕上げた。摩耗試験中の電気抵抗は、ディスクから銅線を離した状態で四端子法により測定した。 ○研究成果 : 硬銅線、軟銅線およびディスクの平均結晶粒径は、325nm、610nmおよび351nmであり、それぞれ超微細粒組織を有していた。錘(3.5g、6.0g、9.6g)により、負荷荷重を変化させ、破断に至るまでの摩耗寿命を調査した結果、平均結晶粒径の小さい硬銅線が、軟銅線よりも長寿命であることが明らかとなった。また、摩耗試験中の電機抵抗を600s間隔で測定を行い、摩耗距離に対する電気伝導率の変化を明らかにした。以上のように、素線の電気抵抗が測定可能な摩耗試験機を開発し、硬銅線および軟銅線の摩耗特性を調査することができた。
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