研究実績の概要 |
(研究の目的) 「七島イ」は主に畳表に用いられる農作物で, 現在は大分県国東半島でのみ生産されている. 七島イで編まれた畳表(琉球表, 大分青表)は滑らかで耐摩耗性があり耐久性はイグサより高いと認識されていて, 最盛期には北は東北地方まで生産が行われていたが, 畳需要の低下や安価な輸入イグサ畳表に需要がおされ生産が落ち込み, 現在にいたっている. 国東半島宇佐地域は七島イの生産技術など環境保全型農業に取り組んでおり, 2013年に世界農業遺産として認定されている. 七島イは地域活性化の可能性を秘めており, 今後も持続的に作物として利用していくために付加価値を高めることが求められている. さらに新しい材料としての用途について検討を行うため, その特異な耐久性について科学的調査・実験を行った. 本研究では, 七島イを材料として利用することを念頭に, 製品材料に優れた特性を与える生物由来原料を七島イから取り出し, 検討することを目的としている. 七島イ材料を利用した付加価値の高い製品材料の開発を目指す. (実験・結果) 1. 七島イ材料(七島イ粗繊維, 七島イセルロース)を利用した環境浄化用担体の試作 七島イを物理処理あるいは物理・化学処理することで, 七島イ粗繊維, 七島イセルロースをとりだした. 環境浄化用担体の作成において, 重金属との錯体を形成することを期待して, ウレタン結合を有する発泡成型体(七島イーウレタン発泡体)の試作を行った. 発泡成型では成型体を得ることができなかったが, ウレタン結合を有するセルロース誘導体と綿セルロースを積層し複合化することで板状成型体(セルロースーセルロース誘導体複合板状成型体)を得た. 複合化に用いるセルロース誘導体として, ウレタン結合を有するHPC-NPおよびチオウレタン結合を有するHPC-TPを高分子合成した. 2. セルロースーセルロース誘導体複合板状成型体の作成および強度の引張強度の測定 複合板状成型体(セルロース含量20%)の引張試験における最大応力は約40MPa(セルロースのみは300MPa, セルロース誘導体のみは29MPa)であった. セルロース繊維に沿った分子配向をとることで強度の向上が示唆された.
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