研究実績の概要 |
土壌粒子を多量に含む濁水から効率的に土壌粒子を除去するために凝集剤が使用されている。しかし, 既存の凝集剤を使用した場合, その後の脱水処理にコストがかかる。そこで, 本研究では, 感温性高分子(ポリN-イソプロピルアクリルアミド, PNIPAM)を凝集剤として利用することを試みる。PNIPAMは相転移温度以下では, 水和するので水に良く分散し, 土壌粒子表面に容易に吸着すると考えられる。一方, 相転移温度以上では, 脱水和するため, 土壌粒子表面上に吸着したPNIPAMは疎水性となり, 疎水性相互作用により土壌粒子同士が凝集して沈降しやすくなり, かつ水を含まないため, ろ過時間が短縮されることが期待される。本研究の目的はPNIPAMを凝集剤として使用し, 濁水中の土壌粒子(白万古土)の凝集速度が最大になり, かつ, 上澄み液の濁度が最低, ろ過時間が最短になる条件を探索することである。 75μm以下に篩い分けされた白万古土を土壌粒子として使用した。25mLの蒸留水に対して1gの白万古土を添加し, 沈降試験を行った結果, 凝集剤を添加しない場合は全く沈降しなかった。一方, 50 ppmのPNIPAMを添加した場合, 沈降挙動は温度によって大きく異なった。20℃では, 凝集剤無添加の場合と同様に白万古土は全く沈降しなかったが, 50℃では沈降試験開始直後から白万古土の沈降が認められた。上澄み液の濁度測定の結果, PNIPAMを100 ppm添加し, 温度を50℃にすると, 濁度は500 NTU以下と非常に低くなった。ろ過速度は白万古土のみの場合, 20min程度かかっていたが, PNIPAMを添加し, 50℃という温度でろ過を行うことで, ろ過時間は約5minに短縮された。以上の結果から, 懸濁液にPNIPAMを少量添加し, 温度を相転移温度以上にすると, 凝集速度が速くなり, 上澄み液の濁度は低くなり, ろ過速度は速くなることが明らかとなった。
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