研究目的 本研究では新奇酵素であるガラクトフラノース特異的なβ-D-ガラクトフラノシダーゼが微生物にどの程度広く存在しているのかを解明することが目的である。 研究方法 (1)土壌からの目的の酵素活性を持つ微生物の単離、(2)各種微生物から染色体DNAの調製、(3)次世代シーケンサーMiseqによる全ゲノム塩基配列の解読、(4)目的酵素遺伝子の同定、(5)目的遺伝子をPCRにより微生物から増幅して大腸菌内での発現解析(6)目的基質を用いた酵素活性測定の順で行った。 研究成果 土壌から目的の酵素活性を持つ微生物を3株単離することができた。単離できた微生物から染色体DNAの調製を行い、次世代シーケンサーによる全ゲノム塩基配列の解読、全ゲノム配列を決定した。ゲノム解析の結果から、この菌は放線菌であることがわかった。すでに同定していた目的酵素の遺伝子配列を用いホモログ検索を行った結果、相同性の高い遺伝子が見つかった。その遺伝子配列をPCRにて増幅させ、大腸菌内で発現をさせた。大腸菌内での発現を確認できたので、His-tagにて精製したサンプルを目的酵素とした。まず、人工基質であるpNP-Galfを用いて活性の有無を調べた結果、活性を示し、また他のpNP基質と反応させたところ活性を示さなかったことから、この酵素はガラクトフラノース特異的な酵素であることがわかった。さらに、天然基質であるA. fumigatus由来のガラクトマンナンにも作用させたところ、ガラクトフラノースの遊離が確認できたことから、ガラクトマンナンの非還元から加水分解するエキソ型の酵素であることが示唆された。遺伝子配列の相同性により、目的酵素遺伝子配列を発見できたので、これら遺伝子配列を用いて原核微生物から真核微生物のホモログを探索した結果、このガラクトフラノシダーゼは原核から真核微生物まで自然界に幅広く分布していることがわかった。
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